店長日記

2018/07/30 07:26

晴れ 異例の拡大公開で過熱する『カメラを止めるな!』現象。なぜ観客を増やし続けるのか

6:00起床
72.7kg
朝:アイスコーヒー
昼:パスタ
夜:サラダ 豚肉ともやしの香味焼き

低予算の映画「カメラを止めるな」一応ゾンビ映画とうたっているが
少ない上映館では、連日満席で見ることができなかった。
8月3日以降は、TOHOシネマズ新宿をはじめ全国で約100館で上映するようだ。
SNSで有名人、アイドル等の口コミで拡散。TVのワイドショーで取り上げられ
今日の読売新聞でも大きく紹介された。前売り券が3分で完売とか・・。
ゆっくり、見たいが夏休みで満員になるのだろうか・・・。

「出すんじゃない、出るんだ」
映画の冒頭、「監督役」のキャラクターが、「主演女優役」に、こんなセリフを口にする。ゾンビに襲われた恐怖や涙を、演技ではなく本物の感情で発露せよ、という指示だ。

『カメラを止めるな!』の現在を、このセリフのように変換すると
「当てるんじゃない、当たるんだ」
ということだろう。ヒットを狙って、そのとおりになるのも映画だが、観客に愛されてヒットにつながるのが、映画というものだ。

6月23日に、都内のわずか2館で公開が始まった『カメラを止めるな!』は、連日満席が続き(新宿K’sシネマでは72回連続満席を記録)、その後、8館に拡大しても人気が人気を呼び、今週末の8月3日からは40館以上という拡大公開が決まっている。さらに7月28日には、全国約100館に公開が拡大すると発表された。この現象はTVのワイドショーでも取り上げられるなど、今年の映画界の大きなトピックになりつつある。

ミニシアター系でのロングラン上映は『ニュー・シネマ・パラダイス』の40週などの記録があったが、こうした拡大公開は異例で、思い出すのは、2016年の『この世界の片隅に』だ。63館で始まった同作の公開は、2ヶ月近くを経て116館に拡大。その後、200館以上という躍進をとげた。同作に比べても、『カメラを止めるな!』は2館からのスタートなのだから、この展開は劇的である。予定外の拡大公開ではアメリカで、2015年のホラー映画『イット・フォローズ』が、4館から1600館という例もあった。

ではなぜ、『カメラを止めるな!』が、ここまで観客に愛されたのか。
話したい、でも詳しく話せない悶々感の口コミ効果

わかりきった事実とはいえ、SNS やレビューサイトでの口コミが最大の要因である。これは『この世界の片隅に』や『イット・フォローズ』にも当てはまるが、『カメラを止めるな!』が特殊なのは、その面白さを詳しく人に表現しづらい点にある。面白さの最大のポイントを、これから観る人には率直に語らない方がいい。実際に観ないと面白さは実感できない。そのもどかしさを表現する賞賛のコメントが、SNSやレビューサイトで飛び交い、まだ観ていない人の欲求を刺激している。

誰かに伝えたい→詳しく話せない→''そう聞くと'気になって仕方ない'''、というSNSでの好循環が、人々を映画館に足を運ばせている要因だと感じる。指原莉乃や斎藤工ら、有名人が宣伝のためではなく自ら絶賛コメントを発したことも大きな後押しになっているのは、すでに報道されているとおり。

観客の指標となるレビューサイトでも、『カメラを止めるな!』は、フィルマークスで4.5、Yahoo!映画で4.42(7/30現在)と高得点。たとえば、今年の夏休み、最大の話題作のひとつとされていた『未来のミライ』が、フィルマークス3.1、Yahoo!2.55と伸び悩んだことで、思ったほど興収が伸びていないように、ここ数年、観客の口コミ効果の影響力は大きくなり、そこも『カメラを止めるな!』は見事にクリアし、人気を加速させている。

溢れる映画愛、そしてリピーターの続出
ゾンビムービーとして37分におよぶワンカットの撮影と、その後の展開という構造をもつ『カメラを止めるな!』。「突発性」と「計算された構成」の2点が作品の魅力として挙げられるだろう。「ソンビ映画を撮っている」状況のアクシデント的、ドキュメンタリー的突発感に、さまざまな伏線がテンポよく回収されるカタルシス。このテンポのよさが、劇場内を笑いに包む、そして、その笑いが相乗効果の楽しさを生んでいく。

ネタバレとは別に、基本の作品情報から、映画好きの人ならある程度、この作品の構造は予想できるものだろう。しかし構造を予想したうえで、映画ファンだからこそ味わえる、思わぬ感動が立ち現れてくるのも事実である。こうした「映画愛」に溢れている点が、観客のハートを熱くしているのも事実だ。

さらにこの作品は構造上、一回観た後、多くの人がもう一度最初から観直したい欲求にかられる作りになっており、そのため「●回観た」というSNSの書き込みも目立つ。何度も劇場に足を運ばせる現象は、過去のヒット映画でも常識だったが、現段階で公開館数の少ない『カメラを止めるな!』では、このリピーターの続出が激混みの大きな要因となっている。

実写日本映画の伸び悩みも後押し?

もうひとつ、このサプライズヒットの要因として考えられるのは、近年の実写日本映画の、数字としての伸び悩みである。今年の公開作で、現在まで興収20億円を超えた実写の日本映画は『万引き家族』、わずか1本(昨年末公開の『DESTINY 鎌倉ものがたり』は32億円、同じく『8年越しの花嫁 奇跡の実話』は28億円)。2017年も、実写の日本映画でトップ興収は『銀魂』の38.4億円で、年間の13位。つまり上位12本は洋画またはアニメであった。特大ヒットにつながる実写日本映画が明らかに減少傾向にあり、裏を返せば、観客の欲求に十分に応えきれていない現実が感じられる。そんな状況で『カメラを止めるな!』のように、内容自体で強くアピールする作品が出てくることで、観客の欲求を満たしている部分があるのではないか。相次ぐ人気コミックの実写化など、日本映画で同じようなパターンが続くことに、そろそろ観客は真剣に膨満感を味わっているようでもある。

『カメラを止めるな!』は、監督や俳優を養成する専門学校「ENBUゼミナール」のシネマプロジェクト第7弾として、製作費約300万円で作られ、当初、6日間限定のイベント公開が想定されていただけだった。しかしその6日間での上映(2017年11月)がSNSなどの口コミで熱狂的に支持され、現在の状況を作り上げた。
ある意味で、本当に面白い映画がヒットする、という健全な結果である。しかもスター俳優や人気の原作に頼らない、オリジナリティが支持を集めたわけだが、ではこの面白さが、たとえば脚本段階から発見され、大手の映画会社で知名度のある俳優で撮られることは可能なのか? 現在、拡大公開に伴い、『カメラを止めるな!』は、配給・宣伝をアスミック・エースがサポートしている。しかしもし、企画当初から同社が関わり、何人かでも有名俳優がキャスティングされていたら、同じ面白さを観客は体験できたか? その判断は難しい。

突発的な面白さは、予期できないからこそ発生する。

まさに「出すんじゃない。出るんだ」である。

しかしこの『カメラを止めるな!』への熱い反響を、日本の映画会社は注目し、新たな鉱脈への「賭け」を実現してほしい。そこに映画の未来があるとも強く感じる。


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